あなたの自宅は十分な耐震性能を持っているでしょうか?
このところ大きな地震が各地で続いています。2004年には新潟県中越地震を皮切りに、2011年には東日本大震災、そして2016年熊本地震と、震度7に達する巨大な地震が数年単位で日本列島を襲っています。
自分が住んでいる地域でも今後大地震が起きないという保証はないので、自宅の補強工事を考えているという方も多いことでしょう。
耐震性能を調べるには「耐震診断」を受けるという方法があります。
しかし、耐震診断は建築基準法の耐震基準を元に行われるため、予め基準を満たしていることが判れば診断を受ける必要はありません。
この記事では、住宅の耐震性能を調べる方法、「新耐震基準」と「旧耐震基準」の違いと判断方法、そして耐震診断の内容と申し込み方法についてご紹介します。
この記事でわかること
住宅の耐震性能は「建築年数」である程度判断が可能
「新耐震基準」と「旧耐震基準」
基本的に自宅の耐震性能を知るためには耐震診断をいうものを受ける必要がありますが、実は、ある程度自分で判断することが可能です。
耐震性能を自己診断するために必要なのは、自宅が建てられた年数を特定することです。
実は耐震基準は「1981年6月1日」に改正されており、旧耐震基準に該当する住宅の場合は耐震診断を受けるべきでしょう。新耐震基準に該当していてもある条件を満たしている場合、耐震診断を受けておくべきですが、その条件は後で説明します。
新耐震基準と旧耐震基準の大きな違いは「震度6~7に達する場合」と「震度5強程度の場合」に関する条件です。
旧耐震基準では「震度6~7」に関しての基準はなく「震度5程度の地震で倒壊しないこと」という基準だけでした。一方、新耐震基準では「震度6強から7に達する大規模地震で倒壊・崩壊しないこと」「震度5強程度の中規模地震ではほとんど損傷しないこと」という条件が追加されており、より耐震性能が高い住宅になっていることがわかります。
新旧耐震基準の性能の違いは、阪神大震災における被害を見るとよく理解できます。
この震災では旧耐震基準の住宅の約7割が小破から大破といった被害を受けていたのですが、新耐震基準でその規模の被害を受けた住宅はなんと約3割。半分以下という結果になったのです。
これは2016年の熊本地震でも顕著に現れていて、国土交通省酷使技術制作総合研究所が発表した資料によると、最も被害の大きかった益城町中心部において、
- 旧耐震基準の建物702棟中、倒壊したのは225棟
- 新耐震基準の建物1042棟中、倒壊したのは80棟
という結果がでています。
益城町における震度7の揺れは2回起こりましたが、このような想定外の規模においても新耐震基準の建物の9割以上の建物が健在であったということになります。
すなわち、あなたの住宅が建てられた年数が1981年6月1日以降であれば、新耐震基準を満たした住宅であるため、十分な耐震性能を持っているといえるのです!
チェックするべき点は「建築確認済証」の公布日です。これは工事が完了した「竣工年」ではなく、工事を行う前に行う自治体に建築確認申請が認証された年数を表しています。
1982年に完成した建物であっても建築確認済証の交付が1982年5月だったりするとアウトなので注意しましょう。
また、木造住宅の耐震基準は、2000年6月にさらに強固なものに改正されたため、木造住宅の場合建築確認済証の公布日が2000年6月1日以降だと、さらに安心できます。
1971年 | 建築基準法施行令改正 | 鉄筋コンクリート造のせん断補強規定の強化。木造住宅の基礎をコンクリートまたは鉄筋コンクリート造にするなど |
1981年 | 建築基準法施行令改正施工例大改正 (新耐震設計基準) | 耐震設計法の抜本的な見直しが行われた。木造住宅では壁量既定の見直しなど |
2000年 | 建築基準法改正 | 木造住宅では地耐力に応じて基礎を特定する(地盤調査の事実上義務付け)、耐力壁の配置にバランス計算を必要とするなど |
2007年 | 建築基準法改正 | 構造基準の再整備、建築確認・検査制度の厳格化など |
自宅が「新耐震基準」に該当しているか調べる方法
自宅が新耐震基準を満たしているかどうかを確認するには建築確認済証が必要になります。
この公布日が1981年6月1日以降であれば、新耐震基準を満たしているため十分な耐震性能をもつ住宅だと言えるでしょう。
しかし、何らかの理由で建築確認済証を紛失してしまった場合、公布日を調べることができない場合もあります。そのような場合、どのようにして調べたらいいのでしょうか?
建築確認済証を再発行することはできません。再発行するためにはもう一度検査をする必要があるため、工事が完了してしまった住宅では行うことができないのです。
「過去に確認したことが判れば、もう一度交付してもいいじゃないか」と思う方もいるかもしれません。
実は、建築確認済証を再発行してもらうことはできませんが、過去に確認した日付が判る書類を取得することは可能です。そのため、必ずしも建築確認済証が無くとも新耐震基準を調べることはできるのです。
建築確認を行った日付が判る書類は「台帳証明書」です。建築確認や検査が行われた建築物であるかどうか、その証明書がいつ交付されたのかが記載されているのが台帳証明書。
これは各自治体の窓口に申請書を提出することで発行してくれます。
かなり年数が経過した建築物の場合、役所で破棄してしまっている場合があります。その場合は、築年数も相当なもので新耐震基準の建物ではない場合が多いため、耐震診断を受けることをオススメします。
旧耐震基準に該当する場合「耐震診断」を受けることが望ましい
耐震診断とは
旧耐震基準の建物、もしくは建築確認済証を紛失しており台帳も役所で破棄されてしまっている場合「耐震診断」を受けるといいでしょう。
一般的な耐震診断では、建物の仕様が耐震性を持っているのかを図面と目視、建築時期などによる類推により診断します。精密に調べるわけではありませんので確実な耐震性能を出すために「不利な条件」での診断になります。
精密に調べた結果「診断結果よりも耐震性能が良かった」という場合もありますが「診断結果よりも耐震性能が悪かった」ということになることはほとんどありません。
つまり、耐震診断を受けて「耐震性能に問題がある」という結果を受けた場合「耐震リフォームを行う」もしくは「さらに精密な検査を受ける」などの行動に出ればいいというわけです。
耐震診断の申し込み方
耐震診断を申し込む場合、各自治体に申請する方法と民間業者に依頼する方法があります。
自宅が旧耐震基準に該当している場合、各自治体で助成制度があり、無料もしくは安価で診断士を派遣してくれるため、こちらがオススメです。
建築確認済証の公布日が不明の場合、民間と悩むところですが、民間の場合「実際は耐震性能に問題が無いのに「工事が必要」と耐震補強工事への誘導ありきの診断をされた」という事例も発生しているため注意が必要です。
旧耐震基準でも確認済証の公布日が不明でも、出来る限り自治体で実施する耐震診断を受けるに越したことはないと言えるでしょう。
新耐震基準の建物でも注意が必要。簡単にできるセルフチェック
- 築年数が30年以上経過している
- 大地震や水害による床下・床上浸水等の災害にあったことがある
- 白アリの被害に過去、または現在あったことがある
- 瓦屋根など重量のある屋根材を使用している
- 建物の中に吹き抜け部分がある
- 立地上の都合などで、建物の構造が複雑な形になっている
自宅が新耐震基準を満たしていても、安心してはいけません。上記のチェック項目に複数該当するようなら耐震診断を依頼しておいた方がいいでしょう。
築年数が長いと経年劣化も生じてくるため築30年を超えるようなら注意が必要です。
また浸水、白アリ等の被害を受けていると想像以上に劣化が進んでいる場合があります。構造的に柱や基礎に負担をかけるような住宅の場合も、想定外の劣化の恐れがあるため、念のため診断を受けておくといいでしょう。
チェックポイント!
旧耐震基準では震度5強より強い地震への基準がないため、大地震で倒壊してしまう恐れがあります。
新耐震基準が施行されたのは1981年6月1日。1981年5月以前の住宅にお住みの場合、耐震診断を受けておきましょう。耐震診断は自治体に申請することをオススメします。民間業者で行うことも可能ですが耐震性能が十分あるにも関わらず「補強工事が必要」と診断されてしまう場合もあるので、自治体に依頼する方が安心できます。
旧耐震基準に該当しない場合も、築年数や構造的な問題、水害や白アリ等の被害を受けている場合、耐震性能が衰えている可能性があります。不安だと思ったらすぐに耐震診断を依頼しましょう。
地震はいつ起こるかわかりません。できるだけ早いうちに自宅の耐震性能を知り、必要ならばすぐに補強工事をすることをオススメします。