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【高気密・高断熱】宮城県 大河原町の高橋工務店の家づくりの工法・特徴について聞いてみた

2019年7月23日

こんにちは、宮城の家づくり情報局 編集長のユウキ@yuki_housebuild)です。

先日、宮城県柴田郡大河原町を拠点に家づくりを行う「高橋工務店」の構造見学会を取材させて頂きました。

高橋工務店の概要

会社名 株式会社 高橋工務店
代表 高橋 豊
住所 宮城県柴田郡大河原町錦町6-6
電話番号 0224-52-3110
創業 昭和38年4月
初代高橋豊明にて創業
法人設立 平成18年10月 法人化
営業内容 住宅新築工事・断熱改修工事・耐震改修工事・リフォーム工事
営業エリア 大河原町・柴田町・村田町・蔵王町・白石市・角田市・岩沼市・名取市・亘理町

 

高気密・高断熱の技術を軸に多彩な家づくりを行っている高橋工務店。

今回は、代表取締役の高橋 豊さん、そして共に家づくりを行っている奥様の清美さんから、高橋工務店の家作りについて詳しくお話を伺う事ができました。

以下からは、高橋工務店の「本当の意味での高気密・高断熱を実現するための取り組み、お客様に喜ばれる良質な家を作り続けるための施工・品質管理の取り組み」等についてご紹介させて頂きます。(以下、敬称略)

  • インタビュアー紹介

ユウキ

宮城の家づくり情報 編集長 / 2級建築施工管理技士 / 宮城県を拠点にし、信念を持って良質な家づくりを行っている中小規模のハウスメーカー・工務店の情報発信の手助けを行っています / 取材依頼はこちらから随時受付中です。

家づくりで「気密・断熱・換気」3つの要素を徹底する理由

ーー高橋工務店では高気密・高断熱を軸に家づくりを行っていると伺いました。家づくりを行う際に心掛けている事を教えて頂けますか?

高橋:高断熱・高気密を追及する事はもちろん、「その性能を持続的に維持する」という事を心がけながら家づくりを行っています。

近年はどの住宅も高気密・高断熱を謳っていて、断熱材自体の性能も向上してきています。しかし、そもそもの断熱材の施工精度や、地震による揺さぶりによる断熱材のずれ、断熱材の自重によるずり下がり等によって壁内に隙間等が発生してしまうと、高気密・高断熱がかえってあだとなってしまう場合があるんです。

ーーえっ!それは…高気密・高断熱が住宅に悪影響を与えてしまう事があるという事でしょうか?

高橋:いくら高気密・高断熱を謳っていて、熱伝導率が低く”性能が良い”とされる断熱材を使用していても、断熱材を充填した部分に隙間が点在していれば「中気密」となり、空気と熱や移動できる空間が発生してしまいます。湿度を持った空気が温度差によって露点に達すれば、内外に水となって現れる。これが結露と呼ばれる現象ですね。

現在は断熱材の性能が向上している分、壁内に少しでも隙間があれば温度差が生じ、結露が現れやすい環境になっています。ですから、高気密・高断熱で家づくりを行うからには、徹底的に隙間を無くし、かつその状態を長期的に維持できる施工でなければいけません。

ーー「いい断熱材を使っている=高気密・高断熱」と考えてしまいがちですが、決してそうでは無いのですね。換気についてはどのような取り組みを行っているのでしょうか?

高橋:平成15年に高気密住宅のシックハウス対策として「24時間強制機械換気システム」の導入が建築基準法で義務付けられました。2時間に1回の頻度で全室の空気を入れ替わる計算で換気が行われているのですが、これもまた、中途半端な断熱・気密の施工を行っていると悪影響を及ぼす場合があります。

壁内の気密がしっかり取れていないと、換気ダクト内・壁内で結露が生じてカビが繁殖し、給気口やダクトを通じて部屋全体にカビやハウスダクトが蔓延してしまう事も起こり得るんです。

ーー24時間換気システムが災いして部屋全体を汚してしまう可能性もあるんですね…。

高橋:当社では高品質での断熱・気密施工を行う事はもちろん、そういった「換気の重要性」に法的整備が施される前から気が付き、環境整備に取り組んで来ました。高性能な機械換気システムを導入したり、換気ダクトも熱伝導が起きずらい塩ビターポリン製の物を使用したり、引き渡し前には”計画換気測定”を行いデータからも換気が適正に出来ているか確認を行う、等といった工夫を心掛けています。

また、押入れ・クローゼット等、衣類や布団等で湿気が蔓延しやすい環境の場所にも換気ダクトを設ける等、実際の生活環境にも配慮した施工も行うようにしていますね。

クローゼットが設置される予定の箇所に、しっかりと換気ダクトが配管されている

ーー高気密・高断熱はメリットばかりが語られがちですが、換気を含め、思っていた以上にしっかりとした施工管理が必要になりそうです。

高橋:おっしゃる通り、高気密・高断熱の家づくりを行うには、気密・断熱・換気の全ての要素をバランスよく高レベルで施工する必要があります。中途半端に施工するくらいだったら、何もしない方がよっぽど家は長持ちしますよね。

 

超高密度の発砲ウレタンパネル「FPパネル」の性能の秘密

工場生産によって高精度・高品質でウレタン断熱材の施工が可能になる

ーー高橋工務店では「FP(フレーム・パネル)工法」を採用していると聞きました。FP工法で使用する使用する「FPパネル」について詳しくお話を聞かせていただけないでしょうか?

高橋:FPパネルは柱と柱の間に埋め込む構造パネルの事です。全て工場生産で製造されていて、断熱材まで充填された状態で出荷されてきます。最大の特徴は何といっても超高密度で充填された発砲ウレタン断熱材です。

ーー「発砲ウレタン」…最近流行っている断熱材ですよね。

高橋:そうです。発砲ウレタンは隙間なく断熱材を充填でき、気密性を担保しやすいため現在では数多くのハウスメーカーや工務店が採用しています。ただし、発砲ウレタンを現場で壁面に吹き付ける場合、注意しなければならない要素が出てきます。

高橋:まず一つは「密度」の問題。発砲ウレタンは気温・湿度によって発砲の仕方が変わります。特に冬場の寒く乾燥した状況だと、ウレタンがうまく発砲せず密度が確保できない可能性が出てきます。

現場発泡で必要な密度が確保できなかった場合でも、新築時の気密測定はクリアできるかもしれません。しかし、発砲ウレタンが低密度の状態だと、地震等の環境要因で壁面と発砲ウレタンの密着が剥がれ隙間が発生してしまうケースが考えられます。そうなってしまっては、もうその家は高気密・高断熱とは言えなくなってしまいます。

ーー先ほどで聞いたように、隙間があればそこから結露が発生し住宅を痛めてしまう可能性が出て来てしまう訳ですね。

高橋:更に、現場発泡のもう一つの問題は、「”スキン層”を削ぎ落とす必要がある」という事です。発砲ウレタンを吹き付けた際に盛り上がった発泡体の表面部分を「スキン層、または表皮」と言います。

実は、このスキン層こそが発泡体の中で最も高い防湿性能を持っています。しかし現場発泡の場合は、発砲ウレタンの密度を確保するために壁体より厚く発砲し、スキン層ごと削ぎ落さなければなりません。

※発砲ウレタンを現場発泡させ、表皮層を削ぎ落してい施工している様子。

 

ーー「防湿性能が高い部分を削ってしまう事で、断熱材の耐久性に問題が出てきてしまう。」という事ですね。高橋工務店で使用しているFPパネルは現場発泡のウレタン断熱材とは何が違うのでしょうか?

画像出典:FPの家北海道

高橋:先ほど申し上げた通り、「工場生産で発砲ウレタンが超高密度で充填されている。」という部分です。FPパネルは工場で木枠全体に30tもの高圧力で押さえつけながら、発砲ウレタンをパネルの隅々に行き渡るまで注入し製造されます。

私もグラスウール、現場発泡ウレタン、吹き込み断熱等、様々な断熱材を比較・検討してきました。その中でも「1mmの隙間もなく、6面のどのスキン層もカットする事なく製造された、この超高密度の発砲ウレタンパネルであれば、間違いなく気密性・断熱性を担保できる。」自分の目で見て判断した結果、一番確かな工法だと考え、当社ではFPパネルを採用しています。

※FPパネルの実際の製造過程

 

高密度のウレタン断熱材も含めた耐力壁が住宅を強固に守る

実際に見せて貰ったFPパネルの断面サンプル

ーー実際にFPパネルを触ってみると、断熱材自体にもかなり固さがありますね。もしかして、この断熱材自体も耐震強度をもたらす役割を果たしているんでしょうか?

高橋:その通りです。高密度で注入されたウレタン断熱材は壁の一部となり、耐力壁としての役割も果たしているんです。筋交いが入っていないFPパネルであっても「壁倍率2.1倍の国土交通大臣認定」を取得している耐震部材であり、家全体を力強く支えています。そのため、万が一大地震等で柱とパネルを接合している釘やビスが部分的に破断してしまったとしても、壁面のパネルで構造全体を支えるため致命的な損傷にまでには至りにくいんです。

 

徹底した気密処理と、全棟で数値データに基づく検査で施工精度の確認を実施

ーー建物に入った瞬間から思っていたのですが…各所の気密処理の徹底のされ方が半端じゃないですね(汗

高橋:今まで申し上げてきた通り、高気密・高断熱の家に半端な施工は許されません。徹底した気密処理を行うため、柱とパネルの繋ぎ目や床板と柱の繋ぎ目、コンセントボックスの内部、梁を貫通した金物の周囲、etc…、ありとあらゆる隙間は気密テープや発砲ウレタン・シーリング材を用いて塞いでいます。

ーー気密測定器等を用いて、数値データとして気密測定を行う事もあるのでしょうか?

高橋:もちろん施工を徹底するだけなく、全棟で引き渡し前には専用の機械を用いた気密測定・計画換気測定環境測定を行い、数値に基づき施工精度の確認をする事を心掛けています。ちなみに当社ではC値の実測値は平均0.45程度です。

「C値とは」
住宅における相当隙間面積のこと。 建物全体にある隙間面積(c㎡)を延床面積(㎡)で割った数値で、建物の気密性能の指標として用いられ、数字が小さいほど気密性能が優れている。
※高気密・高断熱の家で有名な一条工務店のC値の平均実測値は「0.59」

 

FP工法のデメリット

ーーあらゆる面で隙が無い構造材に見えますが…正直、FP工法・FPパネルパネルに弱点やデメリットみたいな物は存在するのでしょうか?

高橋:正直に申し上げると何点かデメリットは存在します。まず一つはFPパネルのイニシャルコストが高い事。今まで説明させて頂いた通り、FPパネルは高品質・高性能な構造部材です。その分、一般的な木造在来工法と同じ建築コストで家づくりを行う事は難しくなって来てしまいます。

高橋:ただ、コスト調整の手段もあります。いま見て頂いる構造見学会の現場もそうなのですが、「どうしても2階は勾配天井したい」等と言ったこだわりが無い限り、FPパネルを屋根部分に使用しない天井断熱等に変更する事で、建築費用を抑える事も可能です。

このようにいくつかコスト調整を行う手段もありますので、お客様の予算に無理が生じない形でご提案するように心がけて施工を行っています。

ーー高品質・高性能・高精度の部材ともなると、やはり通常のグラスウール等と同じ価格…とは行かないですからね。他にも何かデメリットはあるのでしょうか?

高橋:徹底した気密空間を作っていますので、音が反響しやすい環境にはなってしまいます。同様の理由で乾燥もしやすくなりますので、特に冬場は加湿器や洗濯物を部屋干しする等して、適正な湿度環境を整えて貰う必要があります。

後は、工場生産で製造されているパネルのため、一度切り抜き加工等を行った箇所は、本来の高密度ウレタンの品質で修復は出来ません。コンセント等の取付位置は、一度決めた位置から再度動かすと気密性の面で弱点になってしまうという可能性があるという事です。

また、引渡し後にお客様がエアコン等を後付けで取り付けた際、施工業者がパネルをくり抜いた箇所にしっかり気密処理を施していない場合等に、それが原因で住宅の気密性能が低下してしまう事もありますね。

 

高橋工務店の家づくりについて

デザイン性・自由度の高さを両立した家づくりが、若い世代を中心に喜ばれている

ーーやはり、高橋工務店で家づくりをされるお客様は、高気密・高断熱の家作りを求めて依頼される方が多いでしょうか?

高橋:実は「高気密・高断熱に関してはしっかり行って当然。」と考え取り組んでいる事なので、お客様とお話をする際はその部分を積極的にアピールする事はあまり無かったりします。

当社では、高気密・高断熱の構造をベースとし、洋風・和風・モダン等、お客様の要望に沿う形で様々な家作りに対応する事ができます。そういった外装・内装のデザイン性・自由度の高さの面で、20~30代くらいの若い世代のお客様から良い反響を得られる事が多いですね。


高橋工務店 建築実例

 

間取り設計は徹底して「シンプル」に。どんな時でも安全な家づくりを心掛けている

ーー家づくりを計画している人の多くは「間取り」を気にしている方が多いと思います。高橋工務店では間取り設計のプランを作成する際、どんな事を心掛けているのでしょうか?

高橋:間取り設計に関しては「シンプル」を徹底しています。廊下や吹き抜けは出来るだけ作らず、リビング・キッチン・洗面室等では行き止まりの無い回遊性の同線を確保、コンパクトで無駄の無い空間作りを心掛けています。

子上がりやスキップフロアのある空間は確かにお洒落で写真映えもします。ですが、家に住まう家族はいつまでもその年齢で止ってはいません。みんな成長するし、老いていきます。家族の安全を守るはずの住まいの中で事故が起きないよう、当社では一貫してシンプルで安全な家づくりを行っているんです。


高橋工務店 間取実例

 

1棟ずつ確かな工事で家づくりをするために、あえて施工可能エリアを限定している

ーーホームページを見ると、「施工地域は車で30分の範囲(宮城県 柴田郡、白石市、角田市、岩沼市、名取市)に限定しております。」と記載があります。どのような理由で、現在の工事請負体制を取っているいるのでしょうか?

高橋:一番の理由は「工事品質の確保」です。当社では施工品質を確保するためほぼ決まった大工・職人を起用して家づくりを行っています。施工エリアが遠方になればなるほど、管理の目が行き届きにくなりトラブルが発生した際の対応も後手を踏む事になります。

ーー確かに、現場が遠くなれば、大工さん・職人さんに不要な疲労や負担を与えてしまう事になりますからね。新築工事は長期間に及びますし、工事の品質にも悪影響を及ぼす可能性が出てきそうです。

高橋:後は、「メンテナンスやアフターサービス」の観点も大きいですね。家づくりは建てたら終しまいではない。築年数が経過すれば、どうしてもメンテナンスも必要になる箇所が出てきます。「気密が悪くなった気がする」と言われれば、どんなタイミングであろうと気密測定をやり直すし、サーモカメラを用いて気密に悪影響を与えている箇所を特定したりもします。

依頼内容によっては対応エリア外に足を伸ばす場合もありますが…。基本的な方針としては、家づくりが終わった後もお客様にきめ細かなメンテナンス対応を提供し続けるために、あえて施工エリアを限定していますね。

 

取材を終えて…

以上、高橋工務店の家づくりに関する取材記事をお届けしました。

実際に現地でお話しをさせて頂き、社長・奥様のお二方の人柄と現場の様子から、家づくりに誠実に向き合い・取り組んでいる姿勢が伝わってきました。

高橋工務店では、随時「家づくり相談会」や、今回取材させていたような「構造見学会・完成見学会」を開催しています。

少しでも気になった方はぜひ、ホームページやブログ・SNS等をチェックしてみましょう。

  • 取材協力

(株)高橋工務店 代表取締役社長 高橋豊

事業内容:住宅新築工事・断熱改修工事・耐震改修工事・リフォーム工事
主要営業エリア:大河原町・柴田町・村田町・蔵王町・白石市・角田市・岩沼市・名取市・亘理町

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