こんにちは、ユウキ(@yuki_housebuild)です!
家づくりを計画する上で、各ハウスメーカーや工務店の断熱性能は誰もが気にする部分かと思います。そして、住宅断熱性能を最も左右すると言われるのが「断熱材」です。
とはいえ、各ハウスメーカーの構造・工法を調べていると、各社それぞれ使用している断熱材にも違いがある事がわかります。
この記事ではそんな方のために、ハウスメーカーでよく使用される断熱材をピックアップし、種類による性能の差を比較してみました!
※当記事では各社ハウスメーカーで使用されている断熱材は公式HP及びカタログから調査し掲載していますが、居住地域で標準仕様が異なる会社が殆どです。参考情報として捉えて頂き、詳細は各ハウスメーカーへお問い合わせをお願い致します。
※ハウスメーカーによって断熱材の種類名(グラスウール等)で掲載している場合、製品名(ネオマフォーム等)で掲載している場合があるため、当記事の比較表も種類名・製品名が混在している場合があります。
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断熱材の性能比較方法
断熱材の紹介・解説に入る前に、この記事内での「断熱材の性能の比較方法」を紹介していきます。
通常、住宅の断熱性能は「熱抵抗値(R値)」から読み取る事が出来ます。
熱抵抗値(R値)=材料の厚さ(m) ÷ 熱伝導率
上の計算式に当てはめて、住宅の壁に「断熱材(高性能グラスウール16k 熱伝導率:0.038)」を「120mm」充填した場合の熱抵抗値を計算してみましょう。
「0.12÷0.038=3.1(熱抵抗値)」という熱抵抗値を算出する事が出来ます。この「熱抵抗値」とは、物質の中の熱がの流れにくさを数値化したもので、数値が大きいほど断熱性が優れている事になります。
…と、このように考えてしまうのは早計です!
上記計算式を見てわかる通り、熱抵抗値は「材料の厚さ」によって数値が変動します。
基本的に住宅に使用される断熱材は柱の太さに合わせて選択します。
柱の太さは120㎜なら、断熱材もそれに合わせて120mmの材料を使用します。それ以上の厚みの物を使用するとなれば、建物の室内側か外側に構造を拡大して施工をする必要が出てくるからです。
それによって室内が狭くなるか・敷地が狭くなってしまうデメリットがあるため、基本的には柱の太さに合わせて断熱材を施工する事がほとんどになるんです。
柱の太さは工法によって変わります。木造軸組みなら3.5寸(105mm)か4寸(120mm)、ツーバイフォー工法なら89mm、ツーバイシックス工法なら140mmといった具合に。
当然、柱の太さが違えば、それに合わせて充填される断熱材の厚みも変わってくる訳です。(床や天井の場合、また話は違ってきますが…)
熱抵抗値ではなく「熱伝導率」で断熱材の性能を比較
この事から、断熱材の性能を比較するうえで、断熱材の厚みによって変動してしまう熱抵抗値は、比較の数値としては使用できない事が分かります。
断熱材の性能を比較するためには、いかなる条件でも変動しない数値、すなわち「熱伝導率」の数値を見て比較する必要があるんです。
材料名称 | 熱伝導率 |
アルミニウム | 210 |
コンクリート | 1.6 |
ガラス | 1.0 |
木材 | 0.12 |
断熱材 (高性能グラスウール16k) |
0.038 |
※よく使用される建材の熱伝導率
建物の壁面に充填できる断熱材の厚みは限られていますが、性能の良い材料を知ることで、ベストな断熱材の選択が出来るようになります。
【関連記事】断熱材と同じくらい建物の気密性を保つために重要な「サッシ」についても下記記事にて性能比較・解説を行っています。
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【性能比較】窓サッシ(アルミ、アルミ樹脂、樹脂)の断熱性能を比較してみた
繊維(フェルト・マット)系断熱材
断熱材と言えば、上の写真のように袋詰めの形状の物を思い浮かべる方も多いのでは無いでしょうか。
ガラス繊維等を袋詰めした断熱材は「繊維系(フェルト・マット系)断熱材」と呼ばれています。(※袋詰めされていないタイプの製品も存在します。)
繊維系断熱材は柔らかく押し曲げといった加工が容易なため、数多くのハウスメーカーで採用され、壁・天井等といった箇所に使用されています。
材料名称 | 熱伝導率 | ハウスメーカー/商品(例) | 使用箇所 |
グラスウール10k | 0.05 | ダイワハウス グランウッド等 | 床 |
グラスウール16k | 0.045 | アエラフォーム コスパス等 | 壁 |
高性能グラスウール16k | 0.038 | セキスイハイム グランツーユー等 | 壁 |
高性能グラスウール24k | 0.036 | セキスイハイム パルフェ等 | 天井 |
ロックウール(マット・フェルト) | 0.038 | 積水ハウス ISロイエ等 | 壁・天井 |
上の表はハウスメーカーでよく使用される主要材料名と熱伝導率を並べたもの。
繊維系断熱材には断熱材の王様的存在である「グラスウール」も含まれています。グラスウールの後ろに付いている「k」という単位はガラス繊維の密度の事。値が大きいほど高密度になり熱伝導率が低くなります。
この表の中の繊維系断熱材で最も性能が優れている(熱伝導率が低い)のは高性能グラスウール24kで熱伝導率は0.036でした。また、表には掲載していませんが、高性能グラスウール48k(熱伝導率:0.033)という断熱材も存在します。が、ややオーバースペックで費用対効果が悪く使用されるケースは稀なようです。
実際に調べてみると、熱伝導率0.036の「高性能グラスウール16k」または「ロックウール」を採用しているハウスメーカーが多数ありました。
繊維系断熱材は気密処理が命
繊維系断熱材は、取付けが簡単な断熱材です。ですが、隙間が発生しやすいというデメリットがある断熱材でもあります。
そのため「断熱材同士や壁とのつなぎ目部分は気密テープで接着する」、「断熱材全体を気密シートでカバーする」等といった気密処理が重要になります。
取り扱いがラクな断熱材だけに、そういった気密処理を怠るハウスメーカーも多いようです。せっかく性能が良い断熱材を使用しても、隙間風がスカスカ吹き込むような施工を行っていては何の意味もありません。
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ボード・固形系断熱材
続いて、「ボード・固形タイプの断熱材」を見ていきましょう。ボード・固形タイプの断熱材は、ガラス繊維等の断熱素材に熱硬化性樹脂を混ぜ長方形・正方形の板状に加工された製品です。
耐水・防湿性に優れ繊維系断熱材より型崩れが起こりにくく、簡単に施工できるのが特徴です。
では、各ハウスメーカーでどの材料をどの箇所に使用しているか確認してみましょう。
材料名称 | 熱伝導率 | ハウスメーカー/商品(例) | 使用箇所 |
ビーズ法ポリスチレンフォーム (発砲スチロール)※4号 |
0.043 | 三井ホーム等 | 屋根 |
押出法ポリスチレンフォーム (スタイロフォーム)※3種 |
0.028 | セキスイハイム グランツーユー等 | 床 |
硬質ウレタンフォーム | 0.023 | 一条工務店等 | 床・壁・天井 |
フェノールフォーム (ネオマフォーム) |
0.022 | タマホーム 大安心の家プレミアム等 | 床 |
キューワンボード | 0.021 | アエラホーム クラージュ等 | 天井・外張 |
フェノバボード | 0.019 | アエラホーム クラージュ等 | 床 |
この表でピックアップした中では、熱伝導率が最も低いボード系断熱材は「フェノバボード」でした。アエラホームでは床部分で使用されていましたが、調べてみると壁部分や外張り断熱材として採用しているハウスメーカー・工務店も確認できました。
ボード系断熱材は床以外の箇所で採用しているハウスメーカーは少ない
ただし、固形でがあるゆえに「細かい部分・複雑な形状の箇所へ隙間なく施工するのが難しい」というデメリットもあります。そのため、ボード系断熱材は障害物の無い「床部分」で採用される事が多いです。
床部分で採用される事の多いボード系断熱材ですが、上の写真のように筋交い等が必要ない工法(木造軸組みパネル工法、ツーバイフォー工法)の場合は、壁面にも問題無く施工が可能です。実際に一条工務店では床・壁・天井と全箇所に「硬質ウレタンフォーム」というボード系断熱材が施工されています。
ただし、配線・配管が関係し複雑な施工が必要になる箇所等はどうしても現れるので、ハウスメーカーによっては壁面・天面へのボード系断熱材の採用を拒否される場合もあるようです。
吹き込み系(ブローイング)断熱材
「吹き込み断熱」は、粒状・綿状の断熱材を機械で吹き込み充填し断熱層を造成する施工方法で、ブローイング工法とも呼ばれています。
配管や配線で入り組んだ複雑な箇所にも隙間無く断熱材を敷き詰める事ができるため、主に天井面で採用される事が多い断熱工法になります。
材料名称 | 熱伝導率 | ハウスメーカー/商品(例) | 使用箇所 |
吹込み用グラスウール18K | 0.052 | タマホーム 大安心の家プレミアム等 | 天井 |
吹込み用ロックウール 25K | 0.047 | 各ハウスメーカー・工務店 | 各所 |
セルロースファイバー | 0.043 | 各ハウスメーカー・工務店 | 各所 |
熱伝導率だけを見ると、今までに見てきた繊維系・ボード系断熱材よりは劣ります。
ですが吹き込み断熱では、前述したように「入り組んだ箇所へも隙間なく充填可能」な事に加え「天井面へ施工する場合は厚みの制限が無いため300㎜以上厚みを取る事が可能」です。
天井には、「吹込みグラスウール断熱18K 320mm」を採用。 グラスウールをクルミ状に加工した吹込み工法専用の断熱材を、隙間なく施工でき熱の出入りを大幅に抑制します。吊木や配線周りも確実に施工するので、熱の出入りの隙間がほとんどありません。 引用:タマホーム 大安心の家PREMIUM
吹き込み系断熱材はリフォーム時に苦労する
弱点は防湿性・耐湿性に難がある事。「フィルムや気密シートに守られている繊維系断熱材」や「耐水性のある熱硬化性樹脂が混ぜられているボード系断熱材」と比較して、断熱材を裸のまま置く吹き込み系断熱材は、水気にはどうしても弱くなってしまいます。(※防湿シート内へ施工した場合は別)
また漏水があった場合は、天井石膏ボードの張替が必要になる事もあります。吹き込み断熱材が充填していある状態で天井を開口したら、粒状の断熱材が大量に落下してきてしまいますよね。
リフォーム・改修時の取り扱いが、他の断熱材と比較して難しくなるのも吹き込み断熱材のデメリットと言えるでしょう。
壁面へ施工すると断熱材の自重で下がり、隙間が出来てしまう可能性も
壁面へ充填される事もある吹き込み系断熱材ですが、吹き込み密度が不足していると、断熱材自体の重さと重力により下方向に引っ張られ上部に隙間が出来てしまう事があります。
天井面の場合、断熱材が沈降してしまった場合でも隙間は発生しないため、大きな問題にはなりません。
吹き付け(発砲)系断熱材
吹き付け系断熱材は、繊維系断熱材、ボード系断熱材に次いで現在普及と人気が高まってきている断熱材です。
一番のメリットは「隙間を完全に密閉した状態で断熱材を施工できる事」。
繊維系断熱材やボード系断熱材の場合、入り組んだ形状への施工はどうしても継ぎ接ぎを行う必要があり、その部分で隙間が発生してしまう事が多くなります。(繊維系断熱材の場合ずれ・落ち等のリスクもあります)
吹付系断熱材の場合は、上の動画のように、吹き付けられた箇所から空間を完全に埋め尽くす形で膨張していきます。
吹き付け系断熱材は、主に以下の3商品が採用される事が多いです。
材料名称 | 熱伝導率 | ハウスメーカー/商品(例) | 使用箇所 |
フォームライトSL(吹付) | 0.04 | アエラホーム クラージュ等 | 屋根・壁 |
アイシネンLD | 0.038 | クレバリーホーム RXシリーズ等 | 壁・天井 |
アクアフォーム | 0.036 | 桧家住宅等 | 全体 |
熱伝導率は繊維系断熱材と同水準程度。しかし、隙間を作らず施工できるメリットを考えると、断熱性能は吹き付け系断熱材に軍配が上がるのでは無いでしょうか。
吹き付け系断熱材は「厚みの不足」に要注意
吹き付け系断熱材のデメリットは、決まった形状のある断熱材では無いため「手抜き工事をされる可能性がある」という事。
具体的には「膨れ上がった断熱材をカット整形するのが面倒だから、カットの要らないギリギリの厚さで施工してしまえ」といった手抜きですね。
そんな工事を行えば、当然どこかで断熱材厚の基準に満たない施工箇所が出てきてしまいます。
ハウスメーカーの断熱材のグレードが「どの位置付け」にあるか把握しよう
以上、ハウスメーカーでよく使用される断熱材の種類と熱伝導率についての紹介と解説でした。
検討しているハウスメーカーがあれば、標準仕様の断熱材の情報を基に、以下の3点について深堀して調べてみる事をオススメします。
- どんな形状の断熱材を使用しているのか
- 使用されている断熱材の熱伝導性能は、同じ形状の断熱材の中でどの位置付けにあるのか
- 他の形状の断熱材へ仕様変更する事は可能なのか
ハウスメーカーの営業マンは面倒がって、「標準仕様」以外を進んで提案してくる事は少ないです。
でも、許容できる価格差で「断熱材をグレードアップ可能だとしたら?」、「より隙間が発生しにくい吹き付け断熱に仕様変更可能だとしたら?」